INTERVIEW

3ヶ月の本気で業界第一線にいける、という感覚を得た

佐々木大輔
freee創業者 代表取締役
01
CHAPTER
最も成長を実感したのは、Google時代ではなくインターン時代

(博報堂、投資会社、スタートアップ、そしてGoogleを経ての起業というバラエティ豊かなキャリアステップの中で最も成長したと思うのはいつ?)

1つ選ぶのは難しいですが、実はインターン時代だったかなというのを最近感じます。大学でデータサイエンスを専攻していたのですが、勉強はインプットばかりだと感じていたので、せっかくだからアウトプットしてみたいと思って、マーケティングリサーチ会社でインターンをしました。その当時、業界のみんなが当たり前のように使っている価格決定の手法について、社長がなぜこの手法がいいのか納得できない、意義を教えてほしいと仰って、私の3カ月が始まりました。

調べていくと、社長の言う通り、その価格決定の手法には明確な論拠がなかった。一方、みんなが当たり前だと信じている理由を追求したくて、国会図書館まで行って論文を取り寄せてみると、当初の意図とは違う解釈のもと、盲目的にその手法が使われていることも分かりました。背景が分かったあとに、独自で行ったインターネット調査と関連調査を比較したり、組み合わせたりした結果、今ではその企業の主力メニューとなる新リサーチメニューを作ることができました。

多分、割とニッチなことに関してここまで3カ月間全身全霊を込めた人って、あまりいないんだと思います。ビジネスの世界って、細かく分解していくと、みんなが考えている領域ばかりじゃないので、3カ月も本気で取り組むと、結構割と、その中では一流の知識とか一流の考え方みたいなのって身につけられるよねと。成長と言うとあれなんですけど、その後の自分の在り方とか、自分の限界をセットする基準みたいなのが見つけらた、そんな気がしますね。

02
CHAPTER
freee創業時も手を動かした

(“3カ月ルール”はその後 どのようにキャリアに好影響を与えていますか?)

大いに影響を与えていますね。同じインターン期間中もfreee創業前にも活かしました。
例えば、さきほどの価格決定のメニュー開発の次にやったのは、分析前のデータを加工する仕事の自動化です。データ加工をやらないと、そもそも分析者が分析できない。ただ、そのデータ加工という作業がもう本当に苦痛で苦痛でしょうがなかったんです。だから、プログラミングを一から勉強して、ここを自動化するプログラムを自分で書きました。当初、データ加工の仕事をもう僕はやりたくないから、やらせないでくれと。その代わり、3か月後には自動化しますと言いましたね。

freee創業時にクラウド会計ソフトを作ったのも、「多分これって頑張ればできるんじゃないかな」みたいなのを実践した例ですね。僕はこの時しか実は何か業務で使うようなプログラムを書いたことはないんですが、5年前にクラウド会計ソフトの会社つくりたいと思ったときも、「やりたい、やりたい」と口だけでは人集めする説得力に欠けるなと思って、自分で勉強することにしました。実は、「会計フリー」をリリースする前は、自分でもプログラムを書いてましたね。

だから、短期間に集中して学習し手を動かしてきた経験は、freeeの開発文化とかをつくっていく上でも、すごく良い挑戦だったなと実感しています。
めちゃくちゃクリエイティブに考えなくても、ちゃんと調べて、自問自答しながら、周囲と意見交換してみると、できることはいっぱいあると思います。
とりあえず勉強すればできるんじゃないかって。

03
CHAPTER
ゼロベース思考がずっと支えている

(家族と仕事の関係性について教えてください)

子どもができると、朝早く起きるようになりますよね。その分、夜をだらだら過ごさなくなるし、ちょっと時間が増えたなっていう感覚が、実はあります。ですから、家族の存在で自分の時間がなくなったなという感覚はあまりない。
一方、今まで土日に多くの映画を観ていたのですが、今はできなくなりましたね。ただ、子どもと過ごすことで、映画鑑賞に求めていたことは実現できています。

以前は、かなり多くの映画を週末観ていました。背景として、freeeを創業して2年位は、もう本当に仕事しかしてなくて。土日も仕事のことを考えているか、仕事に関係ある本を読んでいるという感じ。しかし、こんなことをある一定時間以上やると危ないし、組織経営とかをしてると、何ていうのかな、駄目なんですよ。みんな人間だっていう大切なことを忘れてしまうんです。映画を見る、友達と遊ぶなど、なんでも良いが、人間らしいエモーショナルな体験にある程度触れてないと絶対忘れてしまうので、そういうことに意識的に触れるという時間を自分で決めて、土日に映画鑑賞時間を設けていました。

まあ、子どもがいて、子守りをしていること自体が、もう既にエモーショナルな体験を前提にしているので、今までの映画鑑賞から置き換わっていると思っています。土日はどちらも子どもが起きたら、おおよそ子ども中心にしています。エモーショナル体験のバランスとして、週にそのくらいの時間を割くのはちょうどいいなと思っています。
あまり意識してやろうと思わなくても、家族のことなので自然とできちゃう。そういう意味では、便利だなと思っています(笑)

佐々木さんの
一週間

Sunday Night
日曜夜に1週間分のメールをチェックする

Google時代から習慣。普段は、今すぐやらなきゃいけないこと、レスしなきゃいけないこと以外は、メールを見ないし開けない。逆に言うと、ここだけ、ここの時間があるからこそ、平日は通常業務に集中できる。

3 hours per week
1週間で3時間まとまった時間を確保。集中して一人で考える

まとまったことを考えるのに、1時間は短い。煮詰めるための、思考のスイッチを入れるのに3時間を用意している。

Saturday & Sunday
土日は両日走る

「あれ、どうしようかな、なんかやだな」等の悩みは、走っていることでリセットできる。5~10kmぐらいを走っていると、大体途中ぐらいまで来ると、「まあ、どうでもいいか」と。(笑)

Weekday & Saturday
週2日は、読書の時間を作る

土曜夜は必ず読書する。あと、平日どこかの夜にも。時間が限られているからこそ、各領域を効率的におさえるべくビジネス古典を選択。経営、組織論からデータサイエンスまでテーマは多岐に渡る。日本語で絶版になっていることも多く、英語で検索して探すことも多い。

1 week trip
1週間の“山籠もり”計画中

ビジョンとも言える5,10年後のfreeeの姿と、全社員の今の仕事が行き着く1年後の姿の間を埋めるのが今やりたいこと。山でなくてもいいけど、日常から引きはがされ、1人で籠りたい。

PROFILE

佐々木大輔

freee創業者 代表取締役

一橋大学在学中に、インターネットリサーチ会社のインタースコープ(経営統合を経て、現在はマクロミル)にてインターンを経験後、博報堂にて、マーケティングプランナーとしてクライアントへのマーケティング戦略の立案に従事する。その後、未公開株式投資ファームCLSAキャピタルパートナーズでの投資アナリストを経て、株式会社ALBERTの執行役員に就任。
2008年にGoogleに参画。日本におけるマーケティング戦略立案、Googleマップのパートナーシップ開発や、日本およびアジア・パシフィック地域における中小企業向けのマーケティングを統括。2012年7月、freee 株式会社を創業。

日経ビジネス 2013年日本のイノベーター30人 / 2014年日本の主役100人 / Forbes JAPAN 「日本の起業家ランキング」のBEST 10に2016、2017に選出。

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